米軍が1980年に製作した「ソ連戦力評価」
※翻訳サイトなどを活用しているため誤訳などが多いと思います
またページ数が多いので出来るだけ興味深いところだけ
それに説明文をかなり端折って掲載します
少しわかりづらいが
地図上の薄いのがNATOの駐屯軍で、濃いのがWP(ワルシャワ条約機構)
具体的にはフランスに近いところに広がる「9」と「10」がNATO軍で、それより右がWP軍
数字はすぐに行動可能な師団数
【NATOとWPの戦力比】
27個師団 79万9千人
戦車 6,460台
WP
58個師団 97万人
戦車 16,480台
ワルシャワ条約機構の主な戦闘車両
ソ連の装甲車両の生産力
分かりずらいですが、グラフにはアメリカとソ連の生産量が書かれていますが、ソ連のグラフがかなり掠れていて見ずらくなっています
1968年以来、ソ連は65,000台以上の戦車とAPCを生産しており
米国の約4倍の戦車と約3倍のAPCを生産した
過去の生産傾向が続くとなると、戦車の生産数は30%から40%まで増える可能性がある
米国は1960年代からM60シリーズとM113シリーズを生産しているが
ソ連では3種類以上の主力戦車を配備し、T-64およびT-72は13,000台から15,000台ほど生産された
米軍にあるM60戦車の総数よりも多く、また質に関しても高度な装甲によって保護され、大口径で高速弾を発射できる滑腔砲には自動装填装置のほかに、砲の安定装置、電子光学射撃管制システムも組み込まれているので、より少ない訓練で第一射目の命中率を上げることが出来る
だがこれはソ連の設計者が、米国の設計者の手の届かないところに達したというわけでない
米国は同等、もしくはそれ以上のものを製造し、配備することができた
ソ連が今日、技術的優位性を獲得しているのは、緊密で短縮された開発サイクルと部分的に開発されたものを生産し運用する意欲から来ている
実際、過去10年のソ連陸軍兵器の支出は米国の3倍に達している
質の問題
NOTES
1.T-72には自動電子距離計、おそらくレーザー測定器を備えている
2.T-72にはシュノーケルがついている
3.M60A1は60発 T-72は40発
5.M60A1には自動装填装置がない
1984年または1985年までに追加装甲と120mm砲を備えた「XM-1 E1」が利用可能になります
米陸軍はソ連の後続戦車と同等の性能の戦車を生産できるよう期待しています
NOTES
1.大きさ、重さを考慮して判断
2.BMPにはパッシブIRサイトがある
4.BMPには73mm砲がついている
5.BMPにはATGMがついている
1984年までに米軍の歩兵戦闘車が利用可能になれば、BMPの後続車両と比較して量はともかく、質は同等になるだろう
IFV と BMP-FO
NOTES
1.IFVは優れたサスペンションと馬力を備えてる
2.IFVにはサーマルサイトがある
3.IFVには25mmの機関砲がついている
ここまでのデータ、または説明を受けて、NATO支持者は2つの理由からソビエトとの戦力差はないと考えている
1.米国だけではなく、NATOの全ての戦車の数を入れる必要があること
2.NATOは戦車だけではなく、対戦車ミサイルなどの高性能な兵器を使用し、ソ連の装甲戦力に対抗していること
平時では2:1 動員後には2.5:1の戦力比になっている
NATOが1985年までにこれを改善する可能性は低く
ワルシャワ条約機構はこの数的優位を継続するだろう
これは1つ目の理由のメリットにはなるが、慰めにはならない
1975年から1979年までのNATOの戦車調達は平均して、ワルシャワ条約機構の半分以下
NATOは1980年から1985年までの間に約3,000台の戦車を追加すると予想していますが、この主な増加は英国の新たな調達と米国の海外への事前配置のためです
グラフは1975年から1979年までのNATOとワルシャワ条約機構の主力戦車調達数
基本的にM60シリーズで、NATOは105mm以下の主砲と旧式の装甲の戦車に依存しているが、ワルシャワ条約機構は120mm砲と最新の装甲の戦車を多く生産しており、最新式の装甲戦力比はおそらく4:1とNATOを大きく上回るでしょう
この質の違いはとても重要です
以下のものは、現在と近い未来の主力戦車の有効性に関する米軍の比較で
米陸軍資材システム分析局は2台の戦車による1vs1の戦闘を動的モデルを使用し、戦闘(例えば第四次中東戦争など)や射撃やその他の様々なテストデータから各戦車の脆弱性と致死性、および射程距離と交戦時間における発射速度と命中率を比較することで2台の各戦車を評価します
以下のグラフから最近のソ連の優位性を確認することができます
グラフは上に行くほど米軍が優位で、下に行くほどソ連が優位
1950年から1980年までの各主力戦車の評価が書かれている
途中にある黒くなっているところ(M60A1 vs T64/T72M)からは
上の線が1974年の米陸軍がXM-1の開発を承認するときに使用した情報で
下の線が1980年の最新の情報をもとに改めたもので
もしソ連の装甲が最高品質であっても最低品質であっても、その高い防御力のため上に伸びている線よりも下に伸びている線の方に近い可能性が大きい
次の図は米陸軍弾道研究所のデータをもとにした射撃試験の結果で
米軍の第七軍団の使用する4つの主要な対戦車兵器とソ連の3つの戦車を比べています
一番下の表は、対象の戦車に真正面から命中したときに倒せる確率
以上の情報を見ると、基本的にT-62には高い殺傷能力を持っていますがT-72になるとかなりきつく
特にATGMは、質の低いT-72には有効ですが、最新のT-72の正面からでは役に立たない
結論はNATOは1984年まで装甲または対戦車兵器に関してソ連に勝る点はなく
現在の量的な不利をわずかに補うだけであること
【対戦車ミサイル】
ではNATOの希望は対戦車ミサイルにあるのだろうか?精密誘導弾にあるのか?
こちらも未来は暗い
いままで強力だったTOWも今では怪しく、ソ連がT-72とT-64を配備したとき、20年続く米国の対戦車ミサイルの優位性は失われた
改良されるTOWも現在の戦車に対して、欠点を補う可能性はあるがT-80やT-80Iの装甲はこの開発を無意味なものにする可能性がある
縦の100から700は実質的な圧延均質鋼の厚さ
SS-10/11から続くのは米軍のミサイルの貫通力
下のT-54/T-55から続くのはソ連戦車の装甲厚
以下のものは米軍の第7軍に配備されているDRAGONとTOWによる、正面攻撃に対するT-62とT-72の脆弱性表しているもので
DRAGONは100から1,000mの範囲から0°の正面攻撃
TOWは500から3700mの範囲で0°の正面攻撃
戦車の黒いとこが貫通できなかったポイントで、点線の部分が貫通できたポイント
これらの図から、現在ヨーロッパで米軍の指揮官が直面しているATGMの問題を表しています
ATGMはT-62に対しては有効ですが、T-72やT-64はほとんど無敵です
もしT-72の装甲が低品質なものだった場合でもATGMの半分以上は効果がなく、高品質な装甲な場合は殺傷確率は0.20未満まで低下する
なのでATGMを側面や背面、または上部から攻撃するように戦術の変更をする必要があります
そのためにはある程度の射程の優位性を犠牲にする必要がありますが、優位性を失いすぎると制圧射撃や歩兵の攻撃に対して脆弱になる可能性があります
(米陸軍は現在、改良型のTOWを開発していますがこれが登場するのは1982年からです)
【制圧のための戦術】
いずれにせよNATOのATGMを対処するためにソ連軍は装甲と同様に制圧射撃を重要視していると思われる
ソ連の教義ではATGMやその他の対装甲兵器を排除するため、戦車による直接射撃、歩兵戦闘車での支援および攻撃ヘリコプター、大砲や迫撃砲による間接射撃の4つのタイプで対処しようとします
ワルシャワ条約機構軍は戦車の優位性を利用しNATOのATGMを制圧しようと考えている
高密度で大量の戦車で攻撃し、防御側の対応を飽和させることが出来ると考えています
また戦車砲はATGMよりも早く着弾させることができること、ソ連は正面が重装甲で、車体を低く小さくしているため目標になりずらく、乗員はATGMと正面から戦闘できるように訓練されている
ドイツに配備されている米軍戦車の砲弾は8割以上が対戦車砲弾で、ソ連はATGM制圧用に高火力対人弾を中心に搭載しています
またソビエトは戦車以外にもNATOの防衛陣地の奥底まで到達し、車両やバンカーに隠れるATGMなどの兵器を制圧できる物を高く評価しており、ここにきてソ連製ATGMがその役割を果たす
1960年代から1970年代にかけて米軍は2種類のATGMを配備した
DRAGONは射程1000mで、TOWは射程3000mから3700m 以上の2つを配備したのに対しソ連は6種類も配備しましたソ連の最新のATGMは「AT-6 SPIRAL」で射程5000mの半自動指令照準線一致です
現在NATOはワルシャワ条約機構軍よりも多くの対戦車兵器を保有しており、今後1984年までに対戦車兵器の数を大きく増やす予定ですが、そのほとんどは射程が短く、T-72などの高品質な装甲には意味がなく、射程1000m以上の対戦車システムでのみ考慮しても、1984年までにワルシャワ条約機構軍はNATOに対する優位性は70%も拡大することになる。これらの兵器や歩兵支援兵器を戦場で動かすための装甲車については現在、ワルシャワ条約機構軍が明らかに優位に立っており、1984年まで歩兵戦闘車においては5:1の優位を保つだろう
攻撃ヘリはソ連が強く求めている「ATGMの排除」ために最も有効な機動火力で、3ページに記してあるようにソ連内での調達の優先度が高い。1974年4月から10月までの6か月間でソ連は中欧だけで攻撃ヘリを40%増やし、新たに2つのMi-24連隊を編成した
Mi-24ハインドとMi-8 HIP E はNATOの戦車やATGMを直接破壊出来る火力で重武装しており、どちらも大量生産されています。1984年までワルシャワ条約機構軍は攻撃ヘリで1.7:1の優位性を保つと予想されます
次にソ連がATGM対策に主要な対抗手段としている「砲兵」に関して、ワルシャワ条約機構軍は1984年まで約2.5:1で優位性を維持するでしょう
また機械化だけではなく砲弾の改良も進んでおり、クラスター弾やフレシェット、近接信管などを配備しており、ナイロンブランケットなどで保護されているATGMに対しても有効だと思われる
ヨーロッパにおける戦力バランスの決定的な違いは、おそらく火力増強能力で測るのが良く、以下のものはワルシャワ条約機構軍は準備砲撃での排除または射撃の妨害の能力を表しています
図は「中欧の砲兵による投射量の比較 1979年と1984年」
縦は、3分で急増する投射量の数値 単位はメートルトン(1000kg)
NATO側は対砲兵射撃の最大射程を表しており、1984年までにNATOの劣勢が増すことになる
ここまでのを要約すると少なくともソ連は1984年までは大量のソ連製装甲戦力がヨーロッパの戦力均衡に大きく影響を与えること
・ワルシャワ条約機構軍は装甲戦力の数的優位と質的優位を高めるだろう
・ワルシャワ条約機構軍は装甲戦力およびヘリと砲兵の優位性により、NATOのATGMに対抗する有効な手段を構築しつつあること
現在はここまで